138 フィルタリングという壁を用意する意義

Post date: Dec 11, 2015 6:18:33 AM

【コラム:フィルタリングという壁を用意する意義】

フィルタリング無駄論をちらほらと聞くことがあります。

何故無駄であるか、という理由は様々あるでしょうけれど、おそらく多くは抜け道がたくさんあるから、ということが主な理由ではないかと推測しています。

たとえば、野良WiFi、公衆WiFi、モバイルルータや誰かのテザリング、突破できるペアレンタルコントロールや公開される突破指南動画。

ちょっと発想を変えるだけで易やすと突破できる場合があります。

フィルタすることで無菌室状態になり、臭いものにフタしているだけでは学べるものも学べない、という論も聞くことがあります。保護者が子供にずっと付き添って学び取って行ってくれればいいのですが、ネット上でずっと付き添って行く事ができる保護者はそんなに多くなさそうです。敢えてすべて見せる事で耐性をつける。そんな風におっしゃる方もいるようです。

例えば、町中にある貯め池には、フェンスが設置され、「危険はいるな」という看板がかけられます。電力会社の変電所には、仰々しい壁と門があります。家と家の間には塀が設置され、プライバシーをある程度守ります。設備が用意されることによって、子供は入って良い場所、行けない場所、その境界線を学びます。

子供たちは、フィルタリングのないインターネット上で、果たして何をどんなプロセスで学ぶのでしょう。耐性はつくでしょうか。子供たちは精神的な健康を保ったまま学んでくれるのでしょうか。プライバシーは守れるでしょうか。

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子供が能動的にネットで検索または入力をし、クリックしたら、フィルタがブロックする。

ブロックされた理由を子供が保護者に尋ねる。

保護者はどういう経緯でそこにたどり着いたか、入力をしたかを聞き取り、意図を確認し、保護者が予めサイト確認してから意図に応じた判断をし、許可・不許可を決める。

許可・不許可の理由を子供に伝える。

十分に慣れて危険を把握でき、倫理観が備わってくれば、許可を広げていき、ホワイトリストからブラックリストに変更する。

最終的にはすべてのフィルタを外す。

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こういう細かいプロセスを経ることが重要なのではないでしょうか。

ただフィルタをかけるだけではこのプロセスを経ることはできないのは明らかですね。保護者の面倒くさい関わりが必要になりますが、あまりの面倒臭さに二の足を踏みそうではあります。

できれば、この面倒なプロセスをもっと簡便にするような仕組みがあればいいなと思っているところです。そういう製品もありますが、数多くはありませんね。

SNSはSNS用の対応をする必要がありますが、これは親子でSNSでつながっていればある程度見守りはできると思います。誰とつながっているのか、どのように関わりあっているのか、どの程度関わっているか。話し合いながら良いこと、危ない事、伝えていければ理想的ですね。

これを手助けしてくれる製品もあります。年齢に応じて使えると良いなと思います。

子供に”どのような”フィルタリングが必要なのか。こういう議論は聞いたことがありません。フィルタリングが一体なにをフィルタしているのか、開示要求できるのか、何歳からどのようにフィルタの中身を変えていくべきなのか、こういった議論がなかなか深まらないのは残念なことです。

今の保護者がフィルタリングを経験していない、ということも原因の一つかもしれません。

フィルタリングがどのような機能を持ち、何をフィルタし、どのような振る舞いについて通知してくれるのか、様々な機能について能動的に知ってもらえれば、保護者もまた、何がどのように危険なのかを子供に教えることができると思っています。